No.005
山口様邸

自宅のリフォームの際に本格的な“お茶室”を作られたお施主様より、 お茶室が惹き立つようなお庭リフォームのご依頼でした。
茶道の伝統的な導線はある程度守りつつ、モダンなアイテムも取り入れ、新しいお庭として生まれ変わりました。

施工前の状態Before

茶道の世界ではお庭の事を『露地』と呼びます。 この『露地』には、道の作り方(導線)や使っていいもの・いけないものなどの様々な“決まりごと”があります。 今回はその決まりごとを守れる所は守りながら、新しい要素も取り入れた【モダンな『露地』】 を目指すことになりました。

Before
Before
敷地条件がかなり特殊で、建物と今回工事を行うお庭スペースが、38段の階段を上がったところに広がっています。
ダンプや機械が進入できないため、大きな石や重い材料などは使うことが出来ません。
階段の幅も限られているため、工事で使う材料はかなり慎重に選択する必要がありました。

また、お庭の外周が3mほどの高さの擁壁に囲まれており、
圧迫感・閉塞感がかなり出てしまいます。
この「迫りくる壁」を逆にうまく利用した、プライベートガーデンを考えなくてはなりません。

お客様からの細かな要求はなく、完全にプライベートなお庭を、斬新なデザインで作り上げて欲しい、 というご希望でした。
《ガーデンコンサルタント》のウデの見せ所です。

そして生まれ変わったお庭がこちら

施工後After

ウリン(ハードウッド)を使った
斬新な形状のウッドデッキ。

『露地』の主役はリビングと茶室を繋ぐ大きなウッドデッキです。 元のお庭の大部分を占めていた樹脂製のウッドデッキも、この機会に本物の木を使った本格的なウッドデッキに取り替えました。

使用した木材はデッキ材の中でも最強を誇る『ウリン』を使用しています。 30年以上の耐久性があり、メンテナンスをしなくても腐らない特殊な木材です。 デッキの下は雑草対策のために『真砂土』を使用しました。 コンクリートのように固まり、浸透性があるので、水溜りになることなく土に浸み込みます。

お茶室への待合用として、デッキの中央奥寄りにはベンチを作りました。 ちょっとしたお茶も楽しめる空間になっています。 ベンチは既存のヤマボウシの木陰になるので、暑い日でも心地良く寛ぐことができます。 お施主様の飼われている猫ちゃんの休憩場所として活躍しているそうです。

異彩を放つアルミ製のゲート。

『露地』の中心には、木製ではなくあえてアルミ製のゲートを設置。空間を分断することで雰囲気を変えています。 『露地』の作り方には『一重露地』『二重露地』など、敷地の広さににあわせた方法があります。 今回は限られた敷地の中でしたがゲートを2回くぐって茶室に達する『二重露地』のように設計しました。

アルミゲートの縦格子が和の雰囲気を作り、シャープな形状がモダンな雰囲気を演出しています。 梁にはダウンライトを仕込んでおり、ゲートの下を通過する時は足元も照らされ、安全に歩く事ができます。

の常識を覆すステンレスの蹲

茶道の中でなくてはならないアイテムは『蹲(つくばい)』です。 今回はステンレスでできたガーデンパンを『つくばい』として使用しました。 ここはお施主様のアイデアで、しっとりとした庭にシルバーが映える、斬新な『つくばい』が誕生しました。 『つくばい』の周りには『六方石』をあしらいました。 『六方石』や敷き石の一部はお施主様と他県の石材屋まで出向いて探してきたものです。

飛び石洋風な乱貼りの融合。

通常『露地』には飛び石を打ちます。 今回は長野の『佐久鉄平石』を使用し、洋風の住宅でよく行う『乱貼り』と『飛び石』の要素を同時に演出しました。 起伏をつけることで野山を歩いているような気持ちを味わってもらうようになっております。 鉄平石の周りは『本那智石』を使用し、シックな色合いで『露地』全体を引き締めるのに一役買っています。

古代の雰囲気を醸す黒レンガ

アプローチからウッドデッキへ上る階段も石張りで構成し、 花壇は万里の長城で使用されているという黒レンガを使用しました。 様々な素材を使っていますが、色使いを全体的に抑える事で統一感を維持しています。

のある露地の植栽

もともと雑多な樹種が点在していた植木類は、『露地』の雰囲気に合わせてかなり伐採しました。 植栽はお施主様がご用意され、植え込みされました。 一番目立つのは『オオトクサ』。通常のトクサの3倍くらいはありそうな大きなトクサです。 空間の仕切りの役目も果たし、『露地』にもインパクトを与えています。 あとはシダや笹を配置し、和風のセレクトでアレンジされています。 『苔』も配置しましたので、これからの成長が楽しみです。

怪しく光る沓脱石

最後にようやく茶室に到達します。 茶室に入る前には『沓脱石』(くつぬぎいし)を使って上がります。 通常は大きめの自然石を使うところですが、今回はなんと「ステンレス」で作りました。 特注のステンレスの台座に強化ガラスを嵌め込んで、中が見えるようになっています。 箱の中にはお施主様の近所の工場から出るステンレスのクズを集めて中に入れてあります。 照明器具も仕込んであるので、暗くなると箱の中の鉄屑が怪しく光ります。

昼間とは別の貌を見せる夜の和庭園

夜も楽しめるよう、LEDを使ったライトアップの計画も立てました。 照明器具をしかるべき場所に配置し、陰影が楽しめるようになっています。 意図的に設けたお庭内の高低差による危険性を回避するのにも大きく役立っています。 お茶室内から見た風景も昼間以上に素敵になり、これからお茶室にお客様をお招きするのが楽しみですね。

お客様からのお喜びの声はこちらです

通伝統要素を守りつつ、「斬新さ」「自由さ」「使い易さ」を同時に叶えるという難しい設計でしたが、 お施主様からのアイデアや工事がスタートしてからの臨機応変の改善もあり、 デザイン性豊かでまとまりのある素敵な『露地』が出来上がりました。 時間が経過とともに味わいが増す、進化が楽しみなお庭です。