ユーカリ・ポポラス(フトモモ科 ユーカリ属)
「ユーカリ」というと、オーストラリアでコアラが主食とする細長い葉を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、日本において庭木として入ってきた品種では、小さな丸い葉が密生する「ユーカリ・グニー」や、細長い葉からレモンの香りがする「レモンユーカリ」などがよく知られています。
グニーはガーデニングブームの到来と同じ頃、庭木として盛んに植えられていたので、住宅街や商業施設などでも見たことがある人も多いのでは?
ではこのポポラス、どのような特徴があるかというと、葉はグニーと同じく銀白色の丸みのある葉ですが、グニーの葉が少し深みのあるシルバーグリーンで直径1センチ前後の葉が枝に密生するのに対し、ポポラスの葉は淡いグリーン。大きさもグニーより少し大き目で直径3~4センチになります。
葉の付き方は枝にパラパラとまばらに、それぞれの葉が重ならないように付きます。その形は丸みを帯びていて、葉によっては丸みのあるハート型になります。そのかわいい葉が風に揺れる姿は何ともいえずやわらかな雰囲気でモダンな家にも、洋風な白壁などにもよく合います。
大きな丸みのある葉がやわらかな雰囲気のユーカリ・ポポラス
ユーカリの原産地はオーストラリア。現地では800種を超える品種のユーカリが自生していると言われます。そのほとんどが日光が大好きで生育旺盛。現地では樹高20mを超えるものもあります。
そんな大きくなるの?!それじゃうちでは無理…と思われるかもしれませんが、日本の気候ではせいぜい5m前後でとどまってくれるのでご安心を。
もちろん、ポポラスも同様に日当たりの良い場所に植えてあげれば、グングン縦に横に枝を伸ばして生長します。ユーカリの品種問わず、生長スピードがとても早いので、最初はひょろっとしていて心配していたのに、大きくなってきて良かった!と喜んでばかりもいられません。
幹も枝も太くなってくるとノコギリでしか剪定できないような状態になりますので、大きくなりすぎる前に樹高、葉張り(枝全体の幅)共に抑えておきたいものです。
ポポラスは萌芽力が強いので剪定はカンタン。気になる枝はちょこちょこ剪定するだけでOKです。一般的に樹木は枝葉が伸びた分だけ根っこを伸ばそうとします。
つまり、幅を押さえておけば根も大きくならず、両方のバランスが取れれば、管理しやすい状態を保てるというわけです。ユーカリの根は横に広がる性質がありますので、特に葉張りが出ないよう頻繁に剪定をしておくのがコンパクトに抑えるポイントです。
こうして切った枝は単に水に挿すだけでもナチュラルな風情が楽しめます。もちろん、ドライにしてリースやスワッグなどに使ってもとてもお洒落に仕上がります。
この楽しくバラエティ豊富な用途がポポラスの人気の秘密かもしれませんね。
オーストラリアを原産とするポポラスは、乾燥した大地に日が降り注ぐ気候の下で育つ木。やはり栽培条件として欠かせないのは日照です。
よく園芸店などでは小さな鉢に観葉植物のように売られている様子を目にしますが、基本的には屋外の太陽からの光量が必要だと思った方が良いでしょう。光が不足すると必要な栄養分を吸い上げられなくなり、葉をパラパラと落として弱ってしまうことも。
若干の耐陰性もありますが、半日以上は日が入る確保しましょう!
耐寒性としては関東の冬の寒さぐらいであれば耐えられますが、-10度を下回る地域ではプランターでの栽培がおすすめです。冬場、雪が降るようになってきたら室内に取り込んであげましょう。
植え付け直後は根が付くまできちんとした水やりが必要ですが、一度根付けば次々小さなかわいい葉を出してきて、元気に育ってくれます。
逆に苦手なのが土の加湿や風通しの悪い環境。プランター栽培するのであれば、よくある花や野菜の培養土等よりはハーブ用の土など水はけの良い土を選んだ方が良いでしょう。
地植えにする場合は、水を吸い込みにくい粘土質の土の場合、根を伸ばせずに生長が鈍くなったり、強風で倒れてしまうことも。
土の中の水や酸素の通り道を確保できるよう、赤玉土など6~7割はすき込んで土壌改良を行ってあげましょう。
また、風があまり通らない建物や塀、木などに囲まれた環境では、葉が白い粉をまぶしたような状態になるうどんこ病や、葉に茶色の斑点が発生するカビ菌による斑点病、葉の養分を吸汁され葉が白く透けてしまうハダニなどに浸食されることも。
葉にこのような症状が現れたら、光合成を阻止されたり、樹勢が弱ってしまいます。まずは周辺の環境を見直して、通風を改善してあげたり、葉が重なり合わないよう剪定を行ってみましょう。
また、早めに薬剤の散布などで対策を行っておけば予防にもなります。
殺菌効果や抗炎症作用のあるユーカリの葉、原住民アボリジニの間では古くから熱湯をかけたり、葉を煮出して成分を抽出して、薬として傷の消毒やかゆみ止めなどに使われてきたことで知られます。
また精油からは独特のスッとした香りによる「癒し」や「安息」の効果も期待できます。
ただ、このユーカリの精油として使われているのは刺激の少ない数種類の品種のみ。基本的には葉に青梅にも含まれている青酸配糖体という有毒な成分があり、口にすると嘔吐や食あたり等の中毒症状を起こします。
「え?じゃコアラはどうして食べても大丈夫なの?」という疑問も感じるところですが、コアラは青酸を分解する酵素を持っており、食べてもお腹をくださないのだとか。またコアラが食べるのは限られた数種類の品種のみ。これもコアラがユーカリを主食とできる理由なのかもしれませんね。
そんなわけで、特に小さなお子さんの誤飲にはくれぐれも注意したいのと、皮膚への刺激が強いため、直接の塗布なども避けた方が良いでしょう。ただ、ほのかな香りを楽しむ分には問題ないので、部屋にドライとして掛けておいて時折漂う香りでリラックスするのは良いかもしれませんね。
(※但し妊婦さんには刺激が強いので避けておいた方が良いでしょう)
幼木の内は幹がひょろひょろとしているポポラス、地植えにして数年経つと幹も太くなりますが、その分枝数も増えていきます。枝が増えれば葉も増えるため、きちんと定期的な剪定を行っていないと、強風が吹きつけた時には、頭が大きければ大きいほど風に煽られて幹への負担がかかります。
台風一過の朝、庭に出てみたら幹がポキっと折れていた…という話は同じオーストラリア原産のミモザなどにもよく聞く話ですが、ユーカリも他なりません。主幹が折れてしまうと、実に悲し気な状態になりますし、再起不能なのでは?と落胆してしまいますが、そこからが強靭なオーストラリア種の樹木、驚くべき再起を果たすケースが多いのです。
折れた幹の元から新梢を出し、数年経ってみたら2m近くに!という話も。
もちろん、大木になった木が折れたり傾いたり…といった事態は周囲にも危険なので、なるべく事前に阻止したいところですね。
樹高が2m前後になって来たら、なるべくこまめに古い枝や伸びすぎた枝の剪定を行ってあげましょう。
また幹が太くなってくると直径でも10センチは超えてしまうので、しっかり2本以上の八掛け支柱を行っておきましょう。1本支柱だけでは支柱と一緒に風に煽られて倒れてしまいます。
枝が太くなりすぎている場合はノコギリを使わないと剪定ができなくなります。
ポポラスといえば、スワッグやリース。色が褪せにくいため、加工に適しているのも魅力のひとつです。
スワッグなどで使うのであれば、色の系統が似たものを庭に植栽しておけば、日常的に使えます。
たとえば、細かな葉のギンヨウアカシア(ミモザ)やユーカリグニー、オリーブなどは同じようなシルバー系統の色合いながら、少しずつ異なる色のグラデーションが楽しめて、それぞれ繊細な葉がポポラスの大きな葉の味わいを活かしてくれます。
また、低木であればローズマリーやツリージャーマンダーなども、それぞれ細やかな葉の雰囲気が面白いコンビネーションになりそうです!
ぜひポポラスを植えたなら、こうした色や形の相性の良い仲間を一緒に植えて、一緒に水に挿したり、加工して楽しんでみて下さいね。
いかがでしたか?さまざまな魅力を併せ持つユーカリ・ポポラスはとても育てやすく、ご紹介したようなさまざまな楽しみ方ができる木です。
庭にひとつ個性的な木を…と思う方は、プランター栽培からでもぜひトライしてみてくださいね。