オオバコ科 キンギョソウ属 Antirrhinum majyus 一年草・多年草
庭の手入れに時間も手間もかけられないけれど、好みのスタイルで植物を楽しみたい…という方、たくさんいらっしゃいますよね。丈夫で簡単なのに、長いあいだ好みの姿をキープしてくれる植物はとても嬉しいアイテムです。
花色や株の姿が豊富なキンギョソウ。たくさんある中からお好みのチョイスで、イメージどおりのアレンジを楽しんでみてはいかがでしょう。
キンギョソウは手軽に入手できるものがたくさんあります。株や花の姿でいくつか種類が分かれますが、ホームセンターや園芸店で販売されているカラフルな苗が、50円から100円くらいとかなりリーズナブルな値段で豊富にあります。
育て方も、あまり難しいことはなくて手間もほとんどかかりません。11月ごろに出回る地域もたくさんあるので、購入して植え付ければ、11月ごろから翌年の6月ごろまでずっと咲き続けさせることができます。種類によっては、ちょっと一手間かけるだけで、秋にも、また翌年にも咲かせることができるのも大きな魅力です。
キンギョソウは、オオバコ科(以前はゴマノハグサ科)の多年草です。でも、高温多湿に弱いので、日本のような気候では梅雨に枯れてしまうことが多いために一年草扱いになっているものがほとんどです。
地中海沿岸原産の植物で40種類ほどが分布するといわれています。
草丈70cm~100cmほどの高生種とよばれているものは、切り花などでもよく販売されているので、豪華な花束などで見かけた…という方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。そのほか、50cm~60cmほどの中性種、30cmほどの矮性種、横に這うように広がる這性種があります。
日本では、花の形が金魚に似ていることからキンギョソウ(金魚草)という名前がついていますが、別名(英名) Snapdragon (スナップドラゴン)といわれるように、ドラゴンの口に見えたようです。フランスでは、Gueule de loup(狼の口)、 ドイツ語では、Löwenmaul(ライオンの口)、で、どちらも英名に近い印象ですね。
こんな風に、それぞれの国で名前から受ける花の印象は違いますが、どの国のガーデナーにとっても人気の高いアイテムなんですよね。
植物を植えると植え替えなどの手間がかかるのが悩ましいところですよね。その点、キンギョソウは、暖かい地域では11月ごろから6月ごろまで8ヶ月もの長いあいだ次々と咲き続けます。この嬉しい特徴のおかげで、お気に入りの花を長く楽しめるだけではなく、寒いあいだの庭仕事が少なくてすみますね。
カラフルという印象のキンギョソウですが、色だけではなく花の形も、「ペンステモン咲き」、「半八重咲き」、「八重咲き」など個性的なバリエーションが増えてきています。
どんな植物を植えるのかを決めるときに、先に気に入ったものを購入してから…という場合と、先に庭や寄せ植え全体のイメージを決めてから…という場合がありますよね。
どちらが先でも、植物の特徴を知っておくと作りたいイメージに近づけることができますね。特に植物は成長して変化していくものなので、時間経過の様子がイメージできると便利です。
一株でも存在感のあるキンギョソウ。分枝も旺盛でたくさんの花を咲かせます。花壇やエントランスへの通路、ボーダーガーデンなど、効果的にメリハリをつけるのに役立ちます。背が高いキンギョソウの手前側に草丈の低い植物、例えばプリムラやパンジー・ビオラなどを植えると、奥行きや立体感を生み出して実際の広さ以上にゆとりの空間を感じさせることができます。
一輪一輪の花が大きくて、花びらがベル状に大きく開いたボリューム感のあるタイプです。直立した株姿で茎も太くしっかりしていて、草丈が高いものがほとんどです。背が高い植物と一緒に植えても存在感があります。例えばユリやサルビアなどと一緒に植えて、ワイルドガーデンやナチュラルガーデンのような庭を造りたい場合にとてもよく合います。
もともとキンギョソウはたくさん花を咲かせる多花性ですが、こんな風に、ぐるりと同時期に開花するタイプは特別感があります。雨に弱いといわれるキンギョソウの中でも、花びらがしっかりしていて雨で傷みにくいのも嬉しい特徴です。テーブルの中央に飾るアレンジメントなどに最適なタイプですね。
花びらの変異が魅力の品種です。色のグラデーションも美しいうえに、ペンステモン咲きと同じように一輪一輪の花が大きくて見応えがあります。こちらも、茎が太めでしっかりした株姿です。
キンギョソウはとてもポピュラーな植物ですが、ここ数年、品種改良で特別に作り出された品種が続々と販売されるようになりました。
このブランルージュもその中の一つです。宿根性が高く、気温によって葉の色が変化します。寒い時期には、葉も花も濃い赤なのが名前の由来なのだそうです。
細い茎がたくさん分かれる分枝性が高いので、綺麗な葉っぱがどんどん増えていきます。
ブランルージュは、気温の変化によって葉っぱの色が変化していくことがとても大きな魅力です。暖かい時期には、斑入りの葉が素敵ですし、気温が下がってくると花の色と同じくらいに鮮やかな濃い赤に変化していきます。
花も葉も楽しめる、花の無い時期でも一年中カラーリーフとして活用の幅が広いタイプです。風通しと水はけに注意して、肥料切れに気をつけると、植えっぱなしで数年楽しませてくれますよ!
高温多湿に弱いので、直接雨が当たらない場所で管理すると安心です。特に梅雨の時期は軒下などで管理して、過湿にならないようにしましょう。
キンギョソウは、発芽温度15℃~20℃、生育温度10℃~25℃くらい、耐寒性の植物で、ー5℃くらいまで大丈夫だといわれています。種蒔きは秋に蒔くのが基本だとされていますが、寒冷地の強い霜や雪、寒風に小さな苗だと耐えられないことがあるため、地域によって時期を変えた方が成功率があがるんですよね。
園芸区分では、標高や立地など、実際の環境が異なる場合もありますが、おおまかに、関東以西が暖地、関東以北を寒冷地、その中程を温暖地とされている場合が多くあります。
暖地や温暖地では、11月ごろから6月ごろまで戸外の彩りに活躍します。冬のあいだは、水のやりすぎに注意する以外に気をつけることはありません。それぐらい、丈夫で手間いらずな植物です。それでも気温が上がってきたら、蒸れてカビや腐れが発生することがあるので、込み合った枝を整理して風通しを良くしましょう。
寒冷地では、戸外への苗の植え付けも暖かくなってからです。そのため、寒い地域の花期は4月から6月ごろになります。
キンギョソウは、光りが当たって発芽する好光性種子なので、土のうえにパラパラッと蒔くだけで芽がでてきます。間引きや植え替えの手間を省くために、種同士の間隔が空くように蒔きましょう。土は被せないようにします。芽が出るまで小まめに水やりをすることが大切です。種がとても小さいので、水の勢いが強いと流れ出たり種同士が込みあったりと困ったことになってしまいます。霧吹きを利用すると安心です。
暖地・温暖地では、10月ごろ種蒔きをします。
寒冷地では3月ごろ、暖かくなってきてから種蒔きをします。気温が低いと小さな苗が傷むので、早めに苗を育てたい場合には、温室や屋内で保温して育てましょう。
キンギョソウは、日当たりと風通しと水はけが良い場所が大好きです。水はけさえ良ければ、土の質にはあまりこだわりません。でも、初めて植物を植えるという方や、しばらく手つかずだった場所に植えたいという場合には、手軽に利用できる園芸用の土を利用することをおすすめします。
園芸用の土にもいろいろありますが、その中で、ほとんどの園芸用植物を育てるのに適した土が販売されています。水はけと水持ち、保肥力などがいいようにブレンドされている培養土を利用すると安心です。花と野菜の土や園芸用培養土などが園芸店やホームセンターで販売されています。元肥入りと表記されているものを選びましょう。
園芸用培養土の中には、ブルーベリーの土などのように、特定の植物用にブレンドされた○○の土となっているものは性質が違うケースが多いので、間違えないように注意しましょう。
ほとんど手がかからないキンギョソウですが、せっかく植えるのですからたくさん花を咲かせたいですよね。キンギョソウは、花が咲き終わると大きな鞘(さや)状の種をつけます。このまま種を付け続けると、種を育てるのにエネルギーを費やして花を咲かせにくくなってしまいます。早めに摘み取るようにしましょう。種を収穫したい場合には、一つの鞘(さや)に100近くの小さな種ができるので、必要な分だけ残すようにするといいですね。
キンギョソウのように脇芽をたくさん出す植物の場合、早くに伸びた茎を途中から切るとさらに脇芽を出す分枝が盛んになります。この作業をピンチ(摘芯)といいます。分枝が進むとその分花の数も増えるので、ぜひやってみてくださいね♪
風通しを良くするするために、適度な切り戻しも大切です。特に、気温が急激に上がる4月ごろ、様子を見ながら込み合った枝をすいておきましょう。
脇芽を増やすと花の数は増えるのですが、花の大きさが小さめになることが多いです。切り花にしたい場合などで、大きな花を太めの茎に咲かせたい場合には、このピンチは行わずに支柱などで支えて育てましょう。
また、直接雨が当たらない場所で管理できる場合には、梅雨に入る前に地際の少し上でしっかり切り戻しておくと秋にまた花を見ることができるかもしれません。
ピンチや切り戻しは、ついついもったいないと思ってしまいますよね。でも、思い切って切った花をテーブルや玄関の彩りに活用すると楽しくなるかもしれませんね。
キンギョソウは、長い間たくさん花を咲かせてくれる植物です。肥料が切れると生育不良で花数が減っていきます。株元に緩効性(ゆっくりと長く効く)肥料を適量置いておきましょう。また、気温が低い時期には水やりの頻度も少なくなりますし、固形肥料が溶けにくくなります。月に2,3回、液体肥料を規定量に薄めて、水やりのタイミングに合わせてあげると安心ですね。
庭全体をイメージどおりにデザインしたり管理をするのは大変ですよね。でも、寄せ植えなら好みのイメージで気軽に楽しむことができますね。
色んな花色がある植物は、どれも魅力的で迷ってしまうこともしばしば。せっかく作るんですから、できればセンスよく仕上げたいですよね。
あれこれ悩んだときは、同じ色あいでまとめてみるのも人気の方法です。ホワイトガーデンやブルーガーデン、ピンクガーデンやオレンジガーデン…といったイメージです。
例えば、清らかな・静か・厳か(おごそか)…といったイメージで冬に人気が高い白のまとまり
ノースポールや白のネメシアと白のキンギョソウ
白のキンギョソウと、葉っぱがキラキラと光るネモフィラ・プラチナスカイ
あたたかい雰囲気にしたい場合には黄色やオレンジのキンギョソウ
もっとビビッドに…という方は 赤系で赤いキンギョソウとオタフクナンテンで…などなど
いかがでしたか?可愛らしいだけじゃなく、存在感のあるキンギョソウ。お気に入りの一株、あなたの庭に加えてみてはいかがでしょうか。