ジューンベリー(アメリカザイフリボク)<バラ科ザイフリボク属 落葉小高木>
シンボルツリーやお子さんの記念樹には、やはり花や実を楽しめる華やかな木を…と思うなら、ぜひおすすめなのがジューンベリーです。
まず3 月中旬頃から葉より先に枝いっぱいに咲き始める愛らしい真っ白な花は、まっ先に春の訪れを知らせてくれます。
花が終わると、今度はかわいい丸みのある葉を付け始め、美しい新緑からはやわらかな春の光が差し込みます。
やがて初夏には小さくて真っ赤な実がぶら下がるように付き始め、さわやかな葉は重なり合って涼しい木陰をつくってくれます。
秋にはその葉が黄色に色づき、お庭を秋色に染めるのです。
このように、花、新緑、実、そして黄葉と四季を通じて欲張りに楽しめるのが、このジューンベリーの魅力といえるでしょう。
どの季節もイキイキとお庭を彩ってくれます!
その名前の由来ともなっているJune―6 月頃に真っ赤な実を付けるジューンベリー。年によっては5月下旬頃から付き始め、6 月半ばころには最盛期を迎えます。
初夏のお庭を彩る実はかわいいだけでなく、つややかでとても美味しそうに見えます。とはいえ、いざ口に入れるには勇気がいるもの。
「生で食べても大丈夫?」「美味しいのかな?」…とお庭に植えられていても口にせずに過ごしてしまう人もいるようです。
確かにお庭初心者にとって、市販の果実以外の果物を口にする、という体験はちょっとドキドキしますが、それはもったいない!
勇気を出してひとつ口に入れてみると、プチっとした食感でほんのりと甘く、まさに見た目の通りの味わいが広がります。
酸味も渋みも少ないので、そのまま食べても十分美味しくいただけます!
さらに赤みが増して実が柔らかくなっていたら甘味も増してきた証拠。
熟しすぎて落ちてしまう前に、一気に収穫してジャムやシロップづくりにチャレンジしましょう!
家族みんなで次々と実をカゴに入れれば、まるでベリー狩りに来たような気分。お庭で素敵な思い出づくりができそうですね。
作り方も特に面倒な下処理も無く、ミキサーやすり鉢などで軽く実と種を分けたら、砂糖等で煮詰めるだけ。砂糖などとの配分は本やネットでもレシピがたくさん紹介されていますので、探してみて下さいね。
毎年初夏には果実を使ってお菓子づくり、まさに果樹を育てる醍醐味ですね。
ちなみに、この果肉には抗酸化物質でも知られるポリフェノールの一つ、アントシアニンが豊富に含まれているとか。ヨーグルトに入れたり、ジャムとして毎日摂取すればお肌の老化やさまざまな生活習慣病にも一役買いそうですね。
太陽をいっぱい浴びた艶やかな果肉にはアントシアニンも豊富!
果樹というと、やはり気になるのが鳥を寄せ付けるのでは…といった鳥害の問題。
確かに5月下旬~6月頃、実が付き始めると小さな野鳥などが実を求めて集まり始めます。もうすぐ収穫しようと思っていたら、鳥にほとんど食べられてしまっていた!なんてことも。
美味しい実がたくさん成った年はあっという間に無くなってしまうこともあります。
もちろん、その食べクズや糞などでアプローチや道路が散らかったり、汚れてしまうこともあります。ただ、鳥が集まってくる期間は限られていて、実が完熟してくると2週間前後、人気(ひとけ)の少ない朝の早い時間などにちょこちょこと野鳥が集まり始めます。
実が無くなってしまうと、次第に彼らの来訪は減って行きます。
落ちた実を集中的に片付けたりするのは、そんな期間限定の作業といえるでしょう。
これが数カ月続くのであれば誰もがさすがにウンザリしそうですが、1年の中のほんの数日間と思えば、可愛らしい野鳥が実をついばむ姿を楽しめる期間、と気持ちを置き換えることもできそうですね。
ただし、こうした鳥による食べクズや糞などの汚れは周囲の人にとっては迷惑に映ることもあり得ますので、共用の通路やお隣と接している場所は植栽地としては避けた方が良いでしょう。
また、植栽地の近くの舗装は汚れの落ちにくい天然石やタイルの施工は避けた方が無難です。
付け加えると、なぜか大きな鳥にとっては小さな実が魅力的に映らないのか、カラスやトンビなどの大型の鳥の害に悩んでいるという話はあまり聞きません。小さな野鳥の来訪なら歓迎!という方であれば、ぜひ場所を選んで植えてみて下さいね。
またバラ科というと、サクラや梅、バラなど毛虫が付きやすいイメージがありますが、その割にジューンベリーは病害虫が付かないことでも知られます。
甘い実が付くのに虫が少ないのですから、一石二鳥のうれしさですね。
とはいえ、稀にイラガの幼虫が付くことも。イラガは葉の裏に大量の卵を産み付け、生まれた幼虫たちは葉の裏側にびっしりと並んで葉脈が透けて見えるぐらい食べつくします。
姿は蛍光の黄緑色。触ると激痛が走るため、絶対に触らないで下さいね。
「おや?葉が透けてるな」「妙に葉っぱが少なくなったような…」と思ったら、このイラガを疑ってみて下さい。
そして、もし見つけた時は割り箸などで取り除いたり、市販の毛虫退治用の殺虫剤などで退治しましょう。ちなみに卵にも毒針が残っていることがあるそうなので触らないで葉っぱごと取り除きましょう。もし冬の間に幹と似たような色の繭(まゆ)を発見したら、丸ごと取り除いてしまいましょう。
果実や花を付けるジューンベリー、育てる環境としてはやはり光がよく当たる場所が理想ですが、半日以上の光が入るような半日陰の場所であれば問題なく育ちます。
自然な樹形が美しいものが多いので、あまり細かく剪定を入れず、野性的な姿を楽しみたいところです。
ただし、細い「ひこばえ」と呼ばれる枝が株元からにょきにょきと出てきた場合は、なるべく早めに根元から切ってしまいましょう。
ひこばえは樹勢が強く、放置すると親株に栄養を届けにくくなるだけでなく、樹形のバランスも崩れることになります。また、実付きを悪くすることもあるので、気を付けたいところです。
時期としては春から夏頃、何か出てきたなと思ったら太くなる前に切除しましょう。
北米やアジア、ヨーロッパ等に広く分布し、10 種近くが自生するジューンベリー。
国内にも人気の品種は色々ありますが、ここでは庭木としても果樹としてのおすすめ品種を2つご紹介しましょう。
花も実も付きやすく自然な樹形が整いやすいとあって、よく選ばれています。樹高は3m前後になるため、堂々としたたたずまいでまさにシンボルツリーにぴったり。
あまり植える場所が広く取れない、というお庭におすすめの品種です。
樹高2m弱と小柄な割に、実が大き目、さらに耐陰性や耐寒性も強く枝が暴れにくいとあって、一般的な家の庭には美味しい条件が色々揃っています。
ちなみに、実を楽しむためにブルーベリーやオリーブなどの場合は、受粉樹として別の品種を近くに植える必要がありますが、ジューンベリーはその必要のない自家結実性のある樹。つまり、1 本だけでも実を付けてくれます。
実を楽しみたいけれど、なかなか2 本となると場所を取れないことも多い住宅事情を考えると、やはり助かりますね!多くの人に選ばれる理由もよくわかります。
せっかく花や果実を楽しみにして植えたのに、なぜか花が咲かず、実も付かなかった…という年もあります。他の家のジューンベリーは枝いっぱいに咲いているのに、なぜ我が家だけ?とやはり心配になりますね。
その原因はさまざまですが、植え付け直後は木にも環境の急激な変化によるストレスがかかることで、うまく花を付けられない年もあります。
また、花の付く木、植物すべてに言えることですが、近くにとても肥料を必要とする花木などがある場合は栄養を吸い取られてしまって花が少なくなるケースもあります。
よく肥料の表示に、チッ素(N)、リン(P)、カリ(K)の割合が書かれていますが、花や実を付けるにはこのリン酸(P)を肥料分として必要とします。
これを周囲の低木や植物などに取られてしまったことで、花・実が少なくなっていることも考えられます。もし毎年実がならないのであれば、このリン酸の割合が多めの肥料を開花前の3 月頃に与えてみてください。
また、12~3 月頃、ゆっくり効果が出る緩効成の肥料を置いてあげるのも効果的です。
化成肥料は効き目が早い分、効果が強く根を傷めてしまうこともあるので、緩効性肥料だけで様子を見てみても良いでしょう。本来は手間いらずが人気の木ですので!
植え付けて間もない1~2 年の花付きが今ひとつ、という場合は、翌年または2~3年の経過と共に環境に慣れてくれば解決する場合が多いものです。
ジューンベリーはとても環境に順応しやすい木なので、根付きがうまく行けば段々と花も増えていきます。長い目で様子を見てみてくださいね。
庭木として育てやすく、果樹としても楽しい木、ジューンベリーの魅力、十分伝わりましたでしょうか?
ぜひご自宅のお庭にも1 本、入れてみてくださいね!