サクラソウ科 シクラメン属(Cyclamen persicum)宿根草
ハロウィーンが終わって11月も中頃になると、街はクリスマスへと変化していきますね。空気はすっかり冷え込んできたけれど、華やかな街の様子に足取りも軽くなる…そんな景色の中に、ゴージャスな贈り物用の鉢花がたくさん並んでいますよね。冬のあいだ長く咲き続ける植物はとても嬉しい存在です。身近に置いておくとちょっと気分を上げてくれるかもしれません。
贈り物にピッタリのシクラメン!贈るときにどれにしようか迷っていると、自分へのご褒美にも欲しくなる…という方も少なくないのでないでしょうか。あなたにピッタリの植物を見つけてみてはいかがでしょう♪
シクラメンを自分で育てるなんて考えたことない…という方って多いんですよね。贈り物でもらったことがあるけど、花が終わったらそれっきりだし…という声も聞こえてきそうです。
ちょっとポイントを押さえておくと、次のシーズンも綺麗な花をたくさん咲かせることができますよ♪
まずは、シクラメンがどんな植物なのかお伝えしましょう。
シクラメンは、『豚のまんじゅう』という別名があります。球根植物と分類されるシクラメンは、球根のような塊茎から葉っぱや花を芽吹かせる植物です。海外で実際に豚がこの塊茎を食べていたから、英語で“sow bread”(雌豚のパン)という名前になって、日本語に訳したときに『豚のまんじゅう』となったのだとか。
地中海から中近東にかけて20種ほどが分布するといわれています。1700年代にイギリスに導入されて、1800年代には次々と大輪系のゴージャスな花々が品種改良で次々と作り出されるようになりました。
シクラメンは、「室内で鑑賞する大輪系・中輪系・ミニ系」、「戸外で生育可能なガーデンシクラメン」、「長い年数生育可能な原種系」の大きく3種類に分けられます。
イギリスで活発に品種改良された品種は、華やかさや優雅さを求めて育種されていました。育成者の命名によって、「タス系」、「パステル系」、「ピッコロ系」、「作曲家シリーズ」など、たくさんの系統があります。
明治時代に日本にやってきたときには、既にこの品種改良が進んだゴージャスなものでした。そのあと、日本でも次々と華やかで個性的、エレガント、シック、などなど…魅力的な品種が作り出されてきました。
花びら全体がフリル咲きでゴージャス感が満載なシリーズです。
ビビッドなうつむき加減の大きい花びらと萼とのコントラストが魅力的。その姿から名前に『ドレス』がつくものも。
近年人気の、薄紫や濃い紫、茶に近いものなど個性的な色合いのものも続々と。
大輪系・中輪系のシクラメンは、比較的寒さに弱いので室内の明るい窓辺に置きましょう。といっても直射日光がガンガンに当たる場所ではなく、ほんのり明るい程度が大好きです。
店頭に並べられているときは、生産者から引き渡されて間もない時期なので、生産者の育て方によっても多少違ってきます。そのため、お店では蛍光灯の光りが照らしている程度の場所に置いてありますよね。まずはこれからの環境に少しずつ慣らしていくようにしましょう。日中レースのカーテンで日が入る部屋の、ちょっと薄暗いくらいの部屋の内側に2,3日置いておきます。20℃を超えないところがベストですが、難しい場合はできるだけ気温が低い場所がいいですね。暖房の風が直接当たる場所は避けましょう。夜間の温度が5℃~10℃くらいがベストだといわれています。夜間も温度が下がらないという場合には、玄関など、気温が下がるところへ移動して休ませるようにしましょう。
4日目くらいから、少しずつレースのカーテン越しに日が当たる場所へと移動させていきましょう。
日照不足になると、葉っぱや花の茎が細く伸びて全体的にしまりのない株姿になって、花が咲きにくくなってきてしまいます。
日当たりのいい(薄明るい)窓辺に置けない場合には、できるだけ、暖かい日中に外で日光に当ててあげると安心です。このとき、冷たい風が当たると傷んでしまうので注意してくださいね。
窓辺は、日中は暖かくても夜0℃を下回ることもありますよね。気温が下がりすぎるようでしたら、厚手のカーテンを利用するか、夜は部屋の中程に移動させておくようにしましょう。
大輪・中輪系のシクラメンは、底面給水といって鉢が二重になっていて下から水を吸い上げることができる容器に植えられていることがほとんどです。
こんな風に、下の方に窓のような穴があいています。この穴に水を注ぎ入れるようにしましょう。上からザブザブと水やりをしてしまうと、塊茎が傷んでしまうことがあるからです。葉っぱや花が萎れたようにグッタリして見えたら水が切れているサインなので、この穴の8分目くらいまで水を注ぎ入れましょう。
完全に萎れてしまうと復活するのはなかなか大変です。鉢を持ってみて軽くなっていたら水やりのタイミングなのですが、違いが分かりにくいですよね。しばらく留守にするような時には、あらかじめ水を入れておくと安心ですね。
肥料や活力剤をあげるときも水やりと同様に穴に注ぎ入れるようにします。園芸店やホームセンターで、シクラメン専用の肥料や活力剤が販売されています。シクラメン専用のものを利用すると、量やあげる頻度など、説明が詳しく書かれていて使い方がわかりやすいので便利ですね。
小さなタイプのシクラメンで、このあとご紹介するガーデンシクラメンや原種系シクラメンと見た目では違いが分からないこともほとんどです。管理の仕方はラベルを頼りにするしかありません。品名が分かればネットでも詳しく分かる場合もあるのでラベルをとっておくといいですね。
一番気をつけたいのは、ガーデンシクラメンや原種系シクラメンは戸外でも問題無く花を咲かせ続けることができるのに対して、ミニシクラメンは戸外だと傷んでしまう場合もあるということです。ラベルに、耐寒温度が何度まで大丈夫なのか、や管理の仕方などが書かれていることがほとんどなので、確認してから購入しましょう。ガーデンシクラメンだと思って庭植えにしようと買ってきたのに残念…ということは避けたいですよね。
とっても可憐なミニシクラメン。パソコンの横に置いて仕事の相棒として楽しむ…というのもオススメですよ。
中輪系シクラメンやミニシクラメンの中には、寒さに強いものもあります。雪や霜を避ける程度まで耐寒性があるタイプの場合は、軒下など玄関の周りを彩るアイテムとして活躍します。耐寒性があまりないタイプの場合、室内の日当たりのいいレースのカーテン越しの窓辺に置きましょう。先ほど説明した、大輪・中輪系シクラメンと同じように管理すると安心です。
中輪系シクラメンやミニシクラメンは、底面給水の容器ではないポットに植えられているものもたくさんあります。でも、こちらもやっぱり水やりは上からザブザブかけてはいけません。
細口のジョウロなどで、できるだけ塊茎に直接かけないように葉っぱをめくって鉢の内側にぐるりと水をかけるようにしましょう。
もっと簡単な方法として、腰水(こしみず)というやり方があります。この腰水(こしみず)というのは、水を入れた深めの入れ物に鉢ごとつけて、底面給水させるという方法です。でも、この方法は、本来湿地などで育つ植物の栽培に使うやり方なので、シクラメンの場合は様子を見ながら早めに水からあげましょう。長く水につけたままにしておくと根腐れの原因になるので注意が必要です。
上の画像のちょっとグッタリしているシクラメンですが、過湿の場合や鉢の中の温度が上がりすぎた場合にも、同じような見た目になります。そのとき、さらに水をやってしまうと大変です!鉢の中がいつも湿っている過湿はシクラメンの大敵!土の様子を確認してから水やりをするようにしましょう。
日当たりのいい場所に置いていると、冬でも鉢の中がお湯のようになることがあります。他の鉢を周りに置くなどして、シクラメンの鉢の部分だけ日陰になるように工夫してみましょう。
◯花と葉っぱが終わったら乾燥させて!
シクラメンは春あたたかくなってくると花が終わって休眠に入ります。地上部が枯れて塊茎が残る状態です。葉っぱが残り少なくなってきたら水やりをやめて乾燥させるようにしましょう。鉢のまま風通しのいい雨のかからない日陰で秋まで保管しておきます。
◯10月ころからシーズン開始!
秋風が吹き始めたころ、乾燥させていたシクラメンを目覚めさせる用意をしましょう。
以前の容器より一回り大きいものを用意します。以前植わっていた容器が底面給水タイプのものだったら、できるだけ底面給水の鉢を使用した方が成功率が上がります。
植え替える土も、シクラメン専用の土を利用しましょう。一般的な草花用培養土を利用するよりも成功率がグ~ンとあがります。
乾燥させていた塊茎の周りの土を軽く落として、容器に中に新しい土を入れて、軽く湿らせます。その上に塊茎を置き、塊茎の頭の部分(全体の1/3程度)が出る程度に土を被せます。
急に湿り気が多い状態にするよりも、完全に気温が低くなるまでは水やりは控えめにしましょう。雨の当たらない風通しの良い日陰で様子を見ながら管理します。
シクラメンを夏越しさせるのは結構難しいといわれています。これは、日本の高温多湿のせいなのですが、その分成功させたときの喜びは大きいものです。
ぜひ、無事に夏越しさせてみてくださいね♪
ガーデンシクラメンは、シクラメンの中でも、耐寒性・耐暑性に優れていて、戸外に植えることができるのでガーデナーにとても人気のあるタイプです。園芸品種と原種系との交配によって、たくさんの種類が作り出されています。中には、中輪のシクラメンとして販売されているものもありますが、ラベルの説明書きに【庭植えOK】と書かれていれば、ガーデンシクラメンと思って大丈夫です。
戸外で管理できるので、寄せ植えを楽しむアイテムとして重宝します。水はけが良いことはモチロン、冬場は日当たりが良くて、夏場は風通しがいい日陰が大好きなので、落葉集の下などが最適です。
ただ、耐寒性に優れているとはいえ、地面が雪で覆われたり、凍るような場所ではせっかくの花を楽しむことができませんね。そういう場所では、軒下などで楽しみましょう。
軒下でも、強い寒風にさらされるとこんな風に傷んでしまう場合があります。水切れと間違って水をやってしまうケースもおおいのですが、まずは土の状態を確認しましょう。
傷んだ葉や花を摘み取って内側を見てみて、内側の蕾や葉が元気にしていたら大丈夫!
寒風が続く場合には不織布で覆うか、玄関の中へ入れておきましょう。防寒用のグッズもたくさん出ているので活用してみてくださいね。
ガーデンシクラメンとして販売されていることも多い原種系シクラメンですが、もともと厳しい環境の中に自生していた品種なので、交配して作出されたガーデンシクラメンよりも、耐寒性・耐暑性に優れています。
戸外で楽しみたいというガーデナーが増える中、たくさんの品種が販売されるようになりました。
例えば、シルバーリーフがとても魅力の【原種系シクラメン・コウム】
最低気温ー20℃までOKで夏も乾燥させずに夏越しをするという優れものです。
戸外で夏越しをさせることができることができるのも、ガーデンシクラメン・原種系シクラメンの嬉しい特徴なのですが、やはり高温多湿の日本では塊茎を腐らせないよう気をつける必要があります。水はけと風通しは良すぎるくらいがいいですし、プランターに植えている場合には直射日光が当たらないように注意しましょう。夏のプランターの内部は、すぐにお湯のようになってしまいます。
ガーデンシクラメン・原種系シクラメンは、塊茎の表皮が薄いものがほとんどです。購入したときにどんな状態かチェックしておくと夏越しも成功できる確率が上がります。購入した株が土に埋まっている状態のものであれば、夏越しのあいだも土を被せた状態で完全に乾燥しないように注意しましょう。落ち葉や藁(わら)などを被せておくと安心です。
シクラメンが販売されているときに、葉っぱの中心に花が立ち上がってとても綺麗な姿ですね。これは、生産者が”葉組み”という地道な作業をして完成させた姿です。葉組みというのは、葉っぱと花を根元から組み替えるという作業です。
何もしなければ、こんな風に葉っぱが立ち上がってしまって込み合うので、せっかくの花が葉っぱの陰に隠れてしまいます。この葉っぱを一枚一枚寝かせるように株元から整理して広げ、株の中心を開けるようにします。そのときに、花を中心から立ち上がるように葉っぱの茎の上にくるよう入れ替えるようにします。株の中心を開けることで、花芽に光りが当たって開花も促進されます。買ってきたときのような、綺麗な姿をキープすることができますよ♪
葉組みをしてシクラメンの魅力を存分に生かして楽しみましょう♪
傷んだ葉っぱや花は、早めに摘み取るようにしましょう。特に、傷んだ葉っぱをそのままにしておくと、風通しを悪くさせてカビの原因にもなります。茎を根元の近くでつまんで、しっかりと捻(ひね)ります。このとき、捻る(ひねる)ことが大切で、無理矢理引っ張らないようにしましょう。
いかがでしたか?室内で、または戸外の冬の彩りに。可憐なシクラメン、ゴージャスなシクラメン、ちょっと個性的なシックでエレガントなシクラメン、お好みで一鉢いかがでしょうか。